Gemini 3.8 Flash-Lite TTSは、Gemini APIで使える音声合成(TTS)モデルの軽量版です。モデルIDはgemini-3.8-flash-lite-ttsで、Google AI for Developersのリリースノートでは、2026年9月22日の項目に「Gemini 3.8 Flash TTS and Gemini 3.8 Flash-Lite TTS generally available (GA)」と書かれています。つまりプレビューではなく、一般提供(GA)として案内された音声モデルです。
この記事は「Flash TTSでもよいのに、なぜ軽量版を選ぶのか」に絞って整理します。モデルの基本仕様は既存記事の「Gemini 3.8 Flash TTSとは|音声生成の料金・言語・声の選び方」で扱っているため、ここではFlash-Lite固有の論点、つまりFlash TTSとの差、料金の差、対応言語の差、向く用途と向かない用途、旧プレビュー版からの乗り換え方を中心に書きます。取得日は2026年10月6日で、参照した料金ページの表記は「Last updated 2026-10-01 UTC」でした。仕様と料金は変わるため、実装前に各公式ページで現行の表記を確認してください。
先に結論をまとめます。公式ガイドは、Flash-Lite TTSを「高速で費用効率のよい主力モデル」として、大量生成、会話型の音声エージェント、読み上げ機能、日常的な単一話者の音声に向けて位置づけています。表現力・方言・長尺の安定性を最優先する制作はFlash TTSの領域です。2モデルは同じAPI構造と同じプロンプト形式で、モデル名の指定を変えるだけで切り替えられます。
Gemini 3.8 Flash-Lite TTSとは|軽量版の位置づけ
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Gemini 3.8 Flash-Lite TTSは、テキストを音声に変換するGemini APIのモデルで、公式はモデル一覧で「高速で費用効率の高い音声合成モデル」と説明しています。
公式のモデル一覧(Models)には、Gemini 3.8 Flash-Lite TTSの説明として「Fast, cost-efficient text-to-speech model for high-volume production, real-time voice agent cascades, and Voice replication.」と載っています。エンドポイントはgemini-3.8-flash-lite-tts、状態は「New」「Stable」の表示です。Flash TTS側は同じ表で「Flagship creative text-to-speech model」と説明されており、公式の役割分担ははっきりしています。
テキストの世界でFlashとFlash-Liteが「性能重視」と「速度・費用重視」に分かれているのと似た考え方です。テキスト側の軽量モデルの考え方は「Gemini 3.5 Flash-Liteとは|特徴・料金・Flashとの違い」で整理しています。ただしTTSの2モデルは、テキスト生成の賢さではなく、音声の質感・表現の幅・コストを軸に選ぶ点が違います。
もう一つの前提は入出力です。公式のText-to-speechガイドには「TTS models accept text-only inputs and generate audio-only outputs.」とあり、入力はテキストだけ、出力は音声だけです。画像や音声を入れて解説させる使い方はできないので、台本を先に用意する流れになります。
一般提供(GA)の日付と状態|プレビュー版との関係
Gemini 3.8 Flash-Lite TTSは、2026年9月22日のリリースノートで一般提供として案内され、モデル一覧では「New」「Stable」の状態で掲載され、料金ページでもプレビュー表記のない名称で載っています。
リリースノートの同じ項目には、2モデルと同時に、Gemini APIのVoicesエンドポイント(/v1beta/voices)、Voice design、Voice replication、Extended Voice Libraryが並んでいます。リリースノートは、Flash-Lite TTSを「gemini-3.1-flash-tts-previewを置き換えるために作られた、高スループットの本番運用とリアルタイム音声エージェントの連結に向けた、高速で費用効率のよいTTSモデル」と説明しています(英語原文の趣旨)。
ここで注意したいのは、同じ日にGAになったのはFlash TTSとFlash-Lite TTSの2つだという点です。記事や動画で「Gemini 3.8のTTSが出た」とだけ紹介されている場合、どちらのモデルの話か、料金はどちらの表か、を分けて読む必要があります。料金ページではモデルごとに別の表になっています。
プレビュー版(gemini-3.1-flash-tts-preview)を使っている場合は、後の章で扱う移行ガイドに沿って、スタイル指示の書き方と出力形式を見直す必要があります。公式ガイドの「Supported models」表では、Gemini 3.1 Flash TTS PreviewとGemini 2.5 Pro Preview TTSの2つには、Voice designとVoice replicationの対応が付いていません。
Flash TTSとの違い|Flash-Liteで何が変わるのか
Flash-Lite TTSとFlash TTSは同じAPI構造を使い、違いは公式の役割づけ・対応言語数・出力トークン単価にあらわれます。
公式ガイドの「When to use which model」には、「Both Gemini 3.8 TTS models share the exact same API schema and prompting format」と書かれています。つまりコードの書き方も、speech_metadataによるスタイル指定も共通で、modelの値を差し替えるだけで比較できます。違いは次の表のとおりです。出典は公式のText-to-speechガイド、モデル一覧、料金ページです。
| 比較の観点 | Gemini 3.8 Flash-Lite TTS | Gemini 3.8 Flash TTS |
|---|---|---|
| モデルID | gemini-3.8-flash-lite-tts |
gemini-3.8-flash-tts |
| 公式の説明 | 高速で費用効率が高い。大量生成・音声エージェント向け | スタジオ品質の忠実度・表現力・長尺の安定性を重視する主力モデル |
| 対応言語(ガイド記載) | 100以上 | 130以上 |
| 単一話者・複数話者 | どちらも対応 | どちらも対応 |
| Voice design・Voice replication | どちらも対応 | どちらも対応 |
| Standard有料tierの音声出力単価(100万トークンあたり、2026年12月31日まで) | 6.00ドル | 9.00ドル |
| 公式が挙げる得意な用途 | 大量の一括生成、会話型の音声エージェント、読み上げ機能、日常的な単一話者の音声 | 制作物、複雑な複数話者の対話、難しい発音、方言、長尺ナレーション |
表の単価は、料金ページのGemini API、Standard、有料tier、100万トークンあたり、米ドルの表記で、2026年10月6日に確認した値です。料金の詳しい読み方は次の章で扱います。重要なのは、Voice designとVoice replicationがFlash-Liteでも使える点です。軽量版だからカスタムの声が使えない、ということはありません。
一方で、公式がFlash TTSに割り当てている「難しい発音」「地域・少数派の方言」「長尺ナレーションの声と部屋鳴りの安定性」は、Flash-Liteの説明文には含まれていません。公式が書いていない以上、Flash-Liteでそれらが劣ると断定することはできませんが、品質を譲れない案件では自分の台本で聴き比べてから決めるのが安全です。
料金|Flash-Lite TTSの単価と、2027年1月以降の変更
Gemini 3.8 Flash-Lite TTSのStandard有料tierは、入力テキストが100万トークンあたり0.50ドル、出力音声が6.00ドルで、2027年1月1日以降は入力1.00ドル・出力12.00ドルと記載されています。
以下はGemini APIの料金ページにある「Gemini 3.8 Flash-Lite TTS」の表を、Gemini API、有料tier、100万トークンあたり、米ドル、2026年10月6日取得の条件で整理したものです。無料tierは入力・出力とも「Free of charge」で、無料tierでは「Used to improve our products」が「Yes」、有料tierでは「No」と表示されています。
| 区分(有料tier) | 入力(テキスト) | 出力(音声) | 期間 |
|---|---|---|---|
| Standard | 0.50ドル | 6.00ドル | 2026年12月31日まで |
| Standard | 1.00ドル | 12.00ドル | 2027年1月1日以降 |
| Batch | 0.25ドル | 3.00ドル | 2026年12月31日まで |
| Batch | 0.50ドル | 6.00ドル | 2027年1月1日以降 |
表の値は同じ料金ページのFlash-Lite TTSの欄(Standard・Batch)から転記しました。Batchの欄は同ページで「Not available」の無料tierと、有料tierに分かれています。ページには、このほかにFlexとPriorityの欄もあります。非同期の大量処理は、Batchの考え方を「Gemini Batch APIの使い方|非同期処理と50%割引の料金」で確認しておくと、料金表の読み間違いを減らせます。
見落としやすいのは期間の区切りです。料金ページには、2026年12月31日までの単価と2027年1月1日以降の単価が並んで書かれており、後者は前者の2倍の数字です。いまの単価だけで年間の予算を組むと、年をまたぐ運用では見積もりが外れます。予算は「2026年内の単価」と「2027年以降の単価」の2本で作っておくのが堅実です。
また、音声出力のトークンの数え方は、料金ページの脚注に「Audio tokens correspond to 25 tokens per second of audio.」とあります。1秒の音声が25トークンに相当する、という意味です。次の章では、この数字を使って音声の長さ別のコストを計算します。モデル全体の料金の読み方は「Gemini API料金の読み方2026|モデル別単価・キャッシュ・無料枠・試算」とあわせて確認してください。
音声の長さ別の費用試算|Flash TTSとの差を計算する
出力音声のコストは「音声の秒数×25トークン×出力単価」で計算でき、Flash-Lite TTSはFlash TTSより同じ長さの音声を3分の2の出力単価で生成できます。
ここからは仮の例です。公式の単価と「1秒あたり25トークン」の脚注をもとに、出力音声だけの費用を計算します。入力テキストの費用(100万トークンあたり0.50ドル)は含めていません。単価はいずれも、料金ページのStandard有料tier、2026年12月31日までの値(Flash-Liteは6.00ドル、Flash TTSは9.00ドル)です。
| 仮の音声の長さ | 出力トークン数(25トークン/秒) | Flash-Lite TTSの出力費用 | Flash TTSの出力費用 |
|---|---|---|---|
| 10秒 | 250 | 0.0015ドル | 0.00225ドル |
| 10分 | 15,000 | 0.09ドル | 0.135ドル |
| 1時間 | 90,000 | 0.54ドル | 0.81ドル |
| 10時間 | 900,000 | 5.40ドル | 8.10ドル |
10秒の行は、料金ページが「Equivalent to $0.0015 per 10s audio」「Equivalent to $0.00225 per 10s audio」と書いている値と一致します。その他の行は、この10秒あたりの値を掛け算した計算結果です。2027年1月1日以降の単価では、出力費用はそれぞれ2倍になります。たとえば1時間の音声は、Flash-Liteで1.08ドル、Flash TTSで1.62ドルです。
この表から読み取れる判断は2つあります(単価の出典は料金ページです)。1つ目は、1本あたりの絶対額はどちらも小さいので、少量の制作では費用差より品質差を優先してよいことです。2つ目は、毎日大量に読み上げる、利用者ごとに音声を生成する、といった形で量が増えると、3分の2という差が積み上がることです。たとえば月に100時間分の音声を作る場合、2026年内の単価の出力費用は、Flash-Liteで54ドル、Flash TTSで81ドルです。この数字は仮の例であり、実際の請求は入力トークンや再生成の回数で変わります。
再生成の回数は見積もりで見落としがちです。同じ台本を何度か作り直す運用だと、1本の費用は台本の長さ×試行回数になります。品質確認の段階はFlash-Liteで回数を回し、仕上げだけFlash TTSにする、という使い分けも、同じAPI構造だからできる設計です。ただしモデルが違えば声の出方も変わるため、最終版は最終的に使うモデルで確かめます。
対応言語|100以上と130以上の差をどう読むか
公式ガイドでは、Gemini 3.8 Flash-Lite TTSは100以上、Gemini 3.8 Flash TTSは130以上の言語に対応し、入力言語はモデルが自動で判定します。
Text-to-speechガイドの「Supported languages」には、「The TTS models detect the input language automatically.」とあり、言語を指定するパラメータを渡す必要はありません。同じ節に言語ごとの対応表があり、2モデルの対応の有無が○と—で示されています。
その表で、日本語、英語、韓国語、中国語(簡体字・繁体字)、ヒンディー語、インドネシア語、フランス語、ドイツ語、トルコ語は、2モデルとも対応の印が付いています。日本語の音声を作る用途では、言語の対応という点でFlash-Liteが選択肢から外れることはありません。一方、同じ表でタイ語とスウェーデン語は、Flash TTSだけに印が付いています。
| 言語(ガイドの表より) | Flash-Lite TTS | Flash TTS |
|---|---|---|
| 日本語 | 対応 | 対応 |
| 英語 | 対応 | 対応 |
| 韓国語 | 対応 | 対応 |
| 中国語(簡体字) | 対応 | 対応 |
| タイ語 | 表に印なし | 対応 |
| スウェーデン語 | 表に印なし | 対応 |
この表は、公式ガイドの対応表のうち、日本語の運営者が確認することが多い言語だけを抜き出したものです。全言語の一覧は上記のガイドを参照してください。対応言語が一覧にあることと、各言語で同じ品質が出ることは別の話です。公式の「Flash TTSは地域・少数派の方言に向く」という説明は、言語数の差だけでなく、方言への対応の違いも示唆しますが、品質の差を数値で示す記載は、確認した範囲ではありませんでした。
多言語展開では、公開前に各言語の母語話者へ試聴してもらう工程を入れてください。台本の言語が複数にまたがる場合は、1つの文の中で言語が切り替わる箇所の読みも確認しておくと、後からの手戻りが減ります。
声の選び方|Flash-Liteでも使える4つの方法
Gemini 3.8 TTSの声は、プリビルド音声、拡張音声ライブラリ、Voice design、Voice replicationの4つの方法で選ぶか作ることができ、Flash-Lite TTSも4つとも対応しています。
Text-to-speechガイドの「Voice options」には、4つの方法が次のように書かれています。
- プリビルドのスタジオ音声:ガイドの表に並ぶ、あらかじめ用意された30の音声です。
- 拡張音声ライブラリ:言語・アクセント・キャラクター類型の別に、数百の追加音声を
GET /v1beta/voicesで探せます。 - Voice design:自然言語の説明から、カスタムの声(
voice_...のID)を作ります。 - Voice replication:参照音声と同意の音声をもとに、話者の声を複製します。
声の数は、リリースノートでは「150+ prebuilt and custom voices」、ガイドでは「Hundreds of additional voices」と書かれていて、表現が一致していません。どちらも「多い」という意味ですが、正確な数を記事や資料に書くときは、APIでvoices.list()を呼んで実数を確かめる方が安全です。
カスタム音声には上限があります。Text-to-speechガイドによると、保存する形式(store=True)の声は1プロジェクトあたり200件まで、最後の利用から1年で保持期限(TTL)を迎えます。保存しない形式(store=False、voicekey_...)は7日間のTTLです。長期運用で同じ声を使い続けるなら、保存形式を選び、利用が1年以上途切れないよう管理する必要があります。
声の複製は、本人の同意を前提にした仕組みです。同意の音声が求められる流れになっているため、他人の声を無断で使う用途はそもそも想定されていません。社内ナレーションや自社サービスの案内音声に使う場合は、誰の声を、どの用途で、いつまで使うかを文書にしてから進めてください。
複数話者の会話を1回のリクエストで作る場合は、制限があります。ガイドの「Limitations」には、speech_config.speakersによる複数話者は、プリビルド音声で最大2話者までと書かれています。カスタム音声(Voice designやVoice replicationで作った声)を対話に混ぜたいときは、話者ごとにターンを個別に生成して結合する、と案内されています。
APIでの使い方|gemini-3.8-flash-lite-ttsを呼び出す
APIの呼び出しは公式ガイドのコード例のモデル名をgemini-3.8-flash-lite-ttsに置き換えるだけで動作の構造は変わらず、出力は標準でWAV形式の音声になります。
公式ガイドの単一話者の例(Python)は、Interactions APIのclient.interactions.createを使っています。下のコードは、その例の構造を引用し、ガイドではgemini-3.8-flash-ttsと書かれているモデル名だけを、このページの題材であるgemini-3.8-flash-lite-ttsに置き換えたものです。ガイドは「Both Gemini 3.8 TTS models share the exact same API schema」と述べているため、構造は同じですが、実際に動かして音声を確認してから運用に載せてください。
import base64
from google import genai
client = genai.Client()
interaction = client.interactions.create(
model="gemini-3.8-flash-lite-tts",
input=[{
"type": "user_input",
"content": [{
"type": "text",
"text": "Have a wonderful day!",
"annotations": [{
"type": "speech_metadata",
"style": "cheerful and friendly",
}],
}],
}],
response_format={"type": "audio"},
generation_config={
"speech_config": [
{"voice": "Kore"},
]
},
)
with open("out.wav", "wb") as f:
f.write(base64.b64decode(interaction.output_audio.data))
ガイドには、このコードを動かすための前提も書かれています。Pythonはgoogle-genaiが2.25.0以上、JavaScript/TypeScriptは@google/genaiが2.24.0以上、またはREST APIを使う、という条件です。SDKが古いとinteractionsが見つからない、などの原因になるため、最初にバージョンを確認してください。
コードの各部分の意味を整理します。inputには読み上げる台本をそのまま入れます。annotationsのspeech_metadataには、ターン単位の話し方(style)を書きます。response_formatで音声(audio)を指定し、generation_config.speech_configで声(voice)を選びます。ここでは例にあるKoreを指定しています。出力の音声データはBase64で返るため、デコードしてファイルに書き出します。
出力形式についてはガイドに明確な記述があります。同期(unary)のリクエストは、標準でWAV(audio/wav)を返し、44バイトのRIFFヘッダが付きます。ストリーミングの場合は、ヘッダなしの生のリニアPCM(audio/l16、24kHz、モノラル)が標準です。ヘッダなしのPCM、mu-law、A-lawが必要なときは、response_format.mime_typeにaudio/l16・audio/mulaw・audio/alawを指定します。
音声エージェントの応答で、生成された音声を途切れなく再生したい場合は、ストリーミングを使います。ガイドにもstream=Trueを指定する例があります。リアルタイムの会話そのものを扱うときは、TTSではなくLive APIの領域です。違いは「Gemini Live APIとは|対応モデル・料金・セッション制限」で確認できます。
スタイル指示とタグ|軽量版でも表現を調整する方法
Gemini 3.8 TTSは入力テキストを台本そのままの文字起こしとして扱い、話し方の指示はspeech_metadata、息づかいなどの瞬間的な表現は山括弧のタグで分けて書きます。
公式の「Prompting guide」は、「Gemini 3.8 TTS models treat input text strictly as a verbatim transcript.」と明記しています。台本の中に「ここは小声で」のような演出指示を書き込むと、それも読み上げの対象になりかねません。そのため、持続的な話し方(感情、抑揚、速さ、ささやくような口調など)はspeech_metadata.styleに書き、台本には読ませたい言葉だけを置きます。
瞬間的な出来事は、台本の中に山括弧のタグで書きます。ガイドが例に挙げるのは<cough>、<breath>、<sigh>、<short pause>などで、拍手や物音のような効果音のタグは避けるよう書かれています。人の声に由来する表現だけを使うのが、品質を保つ条件とされています。
複数話者のリクエストでは、各ターンのspeech_metadataにspeakerを指定する必要があります。ガイドの移行の節にも「Every turn in a multi-speaker request must explicitly include speaker」とあります。話者の名前は、あらかじめspeech_configで設定した話者と一致させます。
Flash-Liteを使うときは、これらの指示を短く保つのが現実的な方針です。公式は、キャラクターの声をVoice designで先に作り、styleはターンごとの軽い調整に使う運用を勧めています。長い演出メモを毎回付けるより、声を先に固めておく方が、音声エージェントのように多数のターンを処理する場面で、読みのぶれと入力トークンの両方を抑えやすくなります。
Flash-Liteを選ぶ場面・Flash TTSに切り替える場面の判断
用途ごとに、量・表現・言語・長さの4つを確認し、量と速さが主題ならFlash-Lite TTS、表現と安定性が主題ならFlash TTSを選ぶのが、公式の説明に沿った判断です。
ここでは仮の例として、4つの用途を取り上げます。いずれも架空の想定で、実在の事例ではありません。公式ガイドの「When to use which model」の記述と、前章までに確認した料金・対応言語を当てはめて、どちらを先に試すかを考えます。
| 仮の用途 | 先に試すモデル | 理由(公式の記述との対応) |
|---|---|---|
| ニュース記事を毎朝、大量に読み上げ音声にする | Flash-Lite TTS | 大量の一括生成と読み上げ機能が、Flash-Liteの想定用途に挙がっている |
| 問い合わせ対応の音声エージェントで、テキスト応答を音声に変える | Flash-Lite TTS | リアルタイム音声エージェントの連結が、リリースノートの説明にある |
| 複数の登場人物が掛け合う、作品性の高い音声コンテンツ | Flash TTS | 複雑な複数話者の対話、制作物の品質がFlash TTSの想定用途に挙がっている |
| 方言を含む台本、または難しい固有名詞が多い台本 | Flash TTS | 難しい発音と地域の方言が、Flash TTSの想定用途に挙がっている |
判断の手順は次のとおりです。まず、台本の言語がFlash-Liteの対応表に載っているかを確認します。載っていなければ、そこでFlash TTSに決まります。次に、用途が大量処理か、少数の作品かを分けます。大量処理ならFlash-Liteを先に試し、品質が足りない台本だけをFlash TTSで再生成する、という二段構えが取れます。
最後に、試聴の基準を事前に決めておきます。読み間違いの有無、固有名詞の発音、話速の安定、ターンをまたいだ声の一貫性などを、同じ台本でモデルごとに比べます。基準を決めずに聞き比べると、その日の印象で選んでしまい、運用開始後に別の問題が出たときに判断の根拠を示せません。
音声を聞かせる前の台本づくりそのものは、モデル選びと同じくらい品質を左右します。NotebookLMの音声概要のように、資料から会話形式の音声を作る仕組みと、台本を指定して読ませるTTSは用途が異なります。前者の設定は「NotebookLMの音声解説の使い方|形式4種・長さ・プロンプトの設定」にまとめています。
旧プレビュー版からの移行|gemini-3.1-flash-tts-previewを使っている場合
gemini-3.1-flash-tts-previewからの移行では、モデル名の変更に加えて、スタイル指示の置き場所とWAV出力の標準化に対応する必要があります。
リリースノートはFlash-Lite TTSを、gemini-3.1-flash-tts-previewの置き換えとして説明しています。公式ガイドの「Migration guide」には、旧モデルや以前のTTSモデルから3.8世代へ移るときの変更点が書かれています。要点を、順に整理します。
- ターン単位の指示を
speech_metadataへ移す:話し方(style)や話者名(speaker)を、台本の文中ではなく構造化された注釈に書きます。 - 山括弧タグは瞬間的な表現だけに使う:笑い、ため息、咳、息継ぎ、短い間などに限り、効果音のタグは避けます。
- 複数話者では、すべてのターンに
speakerを書く:設定した話者のどれかと一致させます。 - 人物像はVoice designで先に作る:長い「Audio Profile」や「Director’s Notes」のようなメモを、カスタム音声に置き換えます。
- 出力形式の標準が変わった点に対応する:同期リクエストは標準でWAVを返します。
5つ目は見落としやすい変更です。移行ガイドによると、gemini-3.1-flash-tts-previewと以前のTTSモデルは、ヘッダなしの生PCM(audio/l16)を標準で返していました。3.8世代はRIFFヘッダ付きのWAVを標準で返すため、以前のコードで自前のWAVヘッダを付けていた場合、そのまま動かすとヘッダが二重になります。手動のヘッダ処理を外し、返ってきたバイト列をそのまま.wavに書き込む形へ直してください。ヘッダなしのPCMが必要なパイプラインでは、response_formatにaudio/l16を設定します。
移行の確認は、同じ台本を旧モデルと新モデルに通し、出力を並べて聴くのが基本です。読みが変わった箇所があれば、styleの書き方と、台本中のタグの使い方を先に疑います。モデルの差と指示の書き方の差を切り分けて確認しないと、原因の特定に時間がかかります。
導入前の確認|費用・権利・運用のチェックリスト
TTSの導入前には、料金の期間、音声の権利、保存期限、無料tierのデータの扱いを、文書にして確認しておくと、運用開始後の手戻りを減らせます。
前章までの内容を、導入前に確認する項目としてまとめます。確認する順番は、費用と制約、権利、運用の順が進めやすいです。
| 確認する観点 | 確認する内容 | 根拠にするページ |
|---|---|---|
| 料金の期間 | 2026年12月31日まで、2027年1月1日以降の2本の単価で予算を作る | 料金ページ |
| 無料tierの扱い | 無料tierでは入力・出力が製品改善に使われる旨の表示がある。機密性のある台本は有料tierで扱うか検討する | 料金ページ |
| 対応言語 | 台本の言語が、ガイドの対応表に載っているか | Text-to-speechガイド |
| 声の権利 | Voice replicationを使う場合は、本人の同意と使用範囲を文書化する | Text-to-speechガイド |
| 保存期限 | 保存形式のカスタム音声は最後の利用から1年、保存しない形式は7日でTTL | Text-to-speechガイド |
| SDKのバージョン | Pythonはgoogle-genai 2.25.0以上、JavaScript/TypeScriptは@google/genai 2.24.0以上 | Text-to-speechガイド |
無料tierの欄は、料金ページに「Used to improve our products」の行があり、無料tierが「Yes」、有料tierが「No」と表示されていることに基づく整理です。取り扱いの詳細は、利用規約とプライバシーに関する公式の記載を読んで判断してください。
運用面では、同じ台本を繰り返し生成するケースで、コンテキストキャッシュの料金欄が料金ページにあることも覚えておくと便利です。長い共通の前置きを繰り返し送る構成なら、キャッシュの考え方が費用に効く可能性があります。仕組みは「Gemini APIのコンテキストキャッシュとは|料金・使い方・注意点」にまとめています。
音声の元になる文章を会議や取材の録音から作る場合は、反対向きの機能である文字起こしの確認も要ります。音声を文字にする側の仕様は「Gemini 3.5 Transcribeとは|文字起こしの使い方・料金・制限」で整理しています。文字起こしで台本を作り、TTSで音声にする、という往復の流れを設計するときに参照してください。
よくある質問(FAQ)
- Q1. Gemini 3.8 Flash-Lite TTSはプレビューですか。
- いいえ。リリースノートでは2026年9月22日に一般提供(GA)として案内され、モデル一覧では「New」「Stable」と表示されています。置き換え対象の
gemini-3.1-flash-tts-previewがプレビュー版です。 - Q2. Flash TTSとFlash-Lite TTSは、どちらが安いですか。
- 入力のテキスト単価は同じで、出力の音声単価はFlash-Lite TTSの方が低く記載されています。料金ページのStandard有料tier、100万トークンあたり、2026年12月31日までの値は、Flash-Liteが6.00ドル、Flash TTSが9.00ドルです。2027年1月1日以降は12.00ドルと18.00ドルと記載されています。
- Q3. 日本語の音声は作れますか。
- 公式ガイドの対応言語表で、日本語は2モデルとも対応の印が付いています。出典はText-to-speechガイドです。品質は台本で変わるため、本番の台本で試聴してください。
- Q4. 自分の声のコピーをFlash-Liteで作れますか。
- Voice replicationは2モデルとも対応しています。参照音声と同意の音声をもとに複製する仕組みで、詳細はText-to-speechガイドに書かれています。他人の声は、本人の同意なく使わないでください。
- Q5. 画像や音声を入力して読み上げさせられますか。
- できません。ガイドには「TTS models accept text-only inputs and generate audio-only outputs.」とあり、入力はテキストだけです。参照元はText-to-speechガイドです。
- Q6. 旧プレビュー版のコードは、そのまま動きますか。
- モデル名だけの置き換えでは動作が変わる点があります。スタイル指示の置き場所と、標準出力がWAVになった点を、公式の移行ガイドに沿って確認してください。
- Q7. リアルタイムの会話は、TTSでできますか。
- TTSは台本を音声にする機能です。聞きながら話す会話は、別の仕組みであるLive APIの領域です。違いは「Gemini Live APIとは|対応モデル・料金・セッション制限」で確認できます。ただしFlash-Liteは、公式の説明で「音声エージェントの連結」に向くとされています。
まとめ|Flash-Lite TTSは量と速さの主力、表現はFlash TTS
Gemini 3.8 Flash-Lite TTSは、2026年9月22日に一般提供になった軽量の音声合成モデルです。公式の整理では、大量生成、音声エージェント、読み上げ機能、日常的な単一話者の音声に向きます。Flash TTSとはAPI構造が同じで、モデル名を変えるだけで比較できます。
料金は、Standard有料tierの出力音声が100万トークンあたり6.00ドル(2026年12月31日まで)で、Flash TTSの9.00ドルより低く、2027年1月1日以降は両方とも2倍になります。1秒25トークンの換算で、音声の長さからコストを逆算できます。対応言語は100以上で、日本語は対応していますが、タイ語やスウェーデン語など、Flash TTSだけに印のある言語があります。
選び方の手順は、言語の確認、用途が量か作品かの切り分け、同じ台本での試聴、の3段階です。Flash-Liteを先に試し、足りない台本だけをFlash TTSに回す運用なら、費用と品質のバランスを取りやすくなります。基本仕様は「Gemini 3.8 Flash TTSとは|音声生成の料金・言語・声の選び方」、モデル全体の位置づけは「Gemini 3.8 Flashとは?できること・制限・旧世代Flashとの違い」もあわせてご覧ください。
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